マグロ   ----- -\\\\\\\\\\\\\\\\\\----身留苦




そもそもの発端は、
その晩のおかずがマグロの刺身だったのです。

次の日、親が昼時に出前寿司を取ってくれました。
いつもは二日続けて魚は食べたくないし拗ねて別のものを食べる所だけれど、老舗の特上にぎりに文句は消えました。
口の中でとろける淡い桜色の大とろ。


何日か前には夢を見ました。
えんえんと続く線路上をひたすら歩くわたくし。
線路脇に点々と落ちているのは・・・マグロ。
赤黒い切り身が大小さまざまに散らばっています。
よく見ればそれは魚じゃあなくて、自殺者の轢死体の断片なのです。
「ねえ、あなたはなぜそんな死に方をしたのですか」
念仏を唱えると、呼応してあちこちから念仏が聞こえ始め、
魂が幾筋か天に向かいゆらゆらと立ち昇っていきました。
起きれば目に沢山の涙が溜まっており、
こんな状態で起きるのは初めてでした。

列車に飛び込み自殺をした後、脳が損傷していなければかなりの時間意識があるそうで、
以前に読んだある本によれば、飛び込み自殺を目撃した人が自殺者の悲痛な絶叫を聞いたといいます。
「ぎゃーーーーーーっ!」「痛いよーーーっ!痛いよーーーーーーーっ!」「死にたくないーーーーっ!」
自殺者は一瞬にして無になると思い飛び込むのに、意に反して苦しみのたうちながら死んでいくのです。
生きてきた中で味わった地獄以上の地獄を最後に見、その苦しみゆえに自縛の霊と成り果てこの世に留まる、無道無慚。
「甘かった」
気づいたとて、もはや遅すぎました。


私はこんな残酷なコラムを書く気はなかったのです。
でも今日書棚で将棋の米長の対談本を探していて、すぐに見つかったのですが、
その横の方にずっと前探して見あたらなかった「超・こわい話7」の文庫本がちょこなんと在って、
ぱっと開いたら44ページ、タイトルは「マグロ」ときたもんだ。

この「マグロ」も列車に飛び込み自殺した人の分断された死体を拾うお話です。

と、ここまで繋がった偶然の連鎖。
ただの確率の低い偶然の一致ともいえますし、シンクロ二シティーともいえます。
私に「マグロ」のコラムを書かせ、列車飛び込みを考えているどこかの誰かに読ませよう、という超意識の意図した巡り合わせかもしれないとも思い、こうしてしたためている次第です。

おおい、どこかの誰かさん、読んでますかあ?
もうちょっと肩の力を抜いて生きてみませんかあ。
あなたにはどうやらこの世で成し遂げなくてはならない大切な任務が残っているみたいですよう。
或いは少しばかり近未来の自分への呼びかけなのかもしれない、とも思いつつ。(笑)

合掌。